世界史の強み

皆さんは世界史と聞いてどんなイメージが湧きますか?

人によって答えは異なりますが、私のもとにはよくこんな質問を生徒が持ってきます。

「先生!世界史って暗記科目ですよね?覚えるだけなので、授業を取らなくても自力でできますよね?」

これに対して様々な回答があると思いますが、私はこの手の質問には毎回同じ回答をしています。

この文章では、「塾・予備校で世界史を学ぶ意義」についてお話しします!

①知識を体系化し、暗記を最小限に抑える

まず世界史を塾予備校で学ぶ意義の一番大きな点は「知識を体系化し、暗記を最小限に抑える」ことにあります!

もちろん自分で関連付けることが非常にうまく、自力で高得点が取れる生徒もたくさんいらっしゃいます。

その一方で、「用語集や問題集を10周以上したけど、偏差値は50後半しかとれない…早慶志望だから偏差値70は欲しいのに…」と悩み、私の授業を取る生徒もいらっしゃいます。

みなさんがどちらの方はもちろんわかりません。

そこで次の問題にチャレンジして自分がどちらなのか?を判断していただきたいと思います!

古代史からやる学校と近代史からやる学校があるので「古代史」「近代史」のそれぞれ2問用意しました。

それでは、まずは以下の問題にチャレンジしてみましょう!

古代ローマ帝国について、以下のア~エの文章から誤った選択肢一つを選べ。なお、全ての選択肢が正しい場合はオと解答せよ。

ア:ローマ帝国の領土は、イベリア半島出身のトラヤヌス帝の時代に最大版図を実現した。
イ:3世紀には軍人皇帝が連続したことで、ローマの軍事力は拡大し、帝国の安定につながった。
ウ:専制君主政を展開したディオクレティアヌスは四帝分治制を採用し、自身は東の正帝となった。
エ:帝国後期には、ラティフンディアに代わって農奴の先駆であるコロヌスをもちいる農場経営に転換した。

さて、答えはどれでしょう!また、その解答の根拠は何でしょうか!

正解はイです!

軍人皇帝とは各軍団によって擁立された諸皇帝のことで、235~284年の間に26人もの皇帝が連続しました。

頻繁に皇帝の交替が行われ、さらに軍隊の意に反することがあれば容易に退位させられたため、ローマは混乱期に突入するので、「帝国の安定につながった」は誤りですね。

ここで、「軍人皇帝時代=混乱期なんて簡単!こんな問題楽勝だぜ!」って思ったそこのあなた!

ここで、学びを止めてしまってはもったいないです!この軍人皇帝時代の理解を深めて、知識を体系化していきましょう!

まず、そもそもどうして軍人皇帝時代は到来したのでしょうか。

もちろん複数要因はありますが、大きな理由はズバリ「領土の拡大過多」です。

そう、ローマ帝国は領土を大きくしすぎたのです。

ローマ帝国領土

上の地図を見てみましょう。

色がついている部分がローマ帝国の領土です(特に緑の部分はトラヤヌス帝時代の最大版図)。

かなり広いですね。

北方ではゲルマン人地帯と国境を接することになり、ライン川やドナウ川方面を前線として軍団を配置しました。

また、西アジアではイラン系のパルティアとも戦いを繰り広げます。

すなわち、北方ではゲルマン人、東方ではパルティアと戦うため、常にこれらの方面に軍隊の多くを配属させることになりました。

こうして軍人の重要性が増し、さらにローマから遠く離れた地方に軍人が配置されたことで、武力に優れた彼らは皇帝より自立する動きをみせ、先述の軍人が皇帝を擁立する時代が到来したのです(また地方の農業生産が本国イタリアを上回っていたことも軍人の自立を加速させました)。

ところで、皆さんは「テマ(軍管区)制」という用語をご存じでしょうか。

ビザンツ帝国中期に始まった制度で、国の領土を軍管区に分け、そこに派遣した軍の司令官に地方の権限を与える制度です。度重なる外敵の侵入に備えることが背景にありました。

さて、この制度は同国の皇帝権にどのような影響を与えたと思いますか?

もし、この用語を知らなくても、先ほどローマ帝国で軍人皇帝時代が到来した背景を理解できていれば想像できるのではないでしょうか。

そう、軍司令官が自立する動きをみせ、皇帝権の低下につながります。

中央から離れた地方に派遣された軍人はしばしば自立するのです(抽象的概念・歴史の法則)。

それが中国の唐王朝の場合は、節度使が自立し皇帝権の低下を招き、アッバース朝であれば地方のアミールが自立しカリフ権の低下を招きます。

ここで、考えてみましょう。

これらの用語の内容や影響を個別に覚えるよりも、上記の「中央から離れた地方に派遣された軍人はしばしば自立する」という抽象的な概念を理解していれば、いずれの用語も結果は同じなので暗記の労力が減りますよね。

世界史は膨大な知識量を求められる科目なので、暗記のゴリ押しだとパンクしてしまう方もいらっしゃいます。効率的に学習することは非常に重要です。

「学校で近代史しか勉強していないから、ローマ帝国とか古代史はよく分からない!」という人のために、もう1問、時代を変えて例を出します。

義和団事件について、以下のア~エの文章から誤った選択肢一つを選べ。なお、全ての選択肢が正しい場合は、オと解答せよ。

ア:義和団は「扶清滅洋」を掲げて外国公使館を攻撃し、日本・ドイツの外交官が殺害された。
イ:義和団事件後、清朝と列強は北京議定書を締結し、北京駐兵権が認められた。
ウ:義和団は白蓮教の流れをくみ、武術を修練した宗教結社で、清の知識人やエリート層の間で広まった。
エ:義和団事件に対して、実権を握る西太后は当初鎮圧を試みたが、それが困難だと判断すると義和団支持に転換した。

さて、この問題の答え合わせをする前に突然ですが、「バーブ教徒の乱」「マフディーの乱」「マジ=マジの蜂起」「東学党の乱」「義和団事件」、これらの用語はご存知でしょうか?

ご存じの方は、共通点は思いつきますか?

これらは植民地などの被支配地域で発生した反乱や暴動です。加えて、宗教的思想や宗教団体が運動の背景にあります。

その理由は以下のようになります。

宗教的思想や宗教団体が運動の背景

このような流れが展開されます。

すなわち「外国による植民地への経済的進出は現地の貧困層を増加させる」(抽象的概念・歴史の法則)のです。

そして、彼らは宗教に救いを求め、団結した宗教団体が外国の進出に抵抗するのです。

これでもう上記の答えは分かりますね。ウが正解です。

義和団の主な構成員はエリート層ではなく貧困に苦しむ下層民衆です。

この歴史の法則が分かれば、あとは地域別に用語を抑えるだけです。

イランならバーブ教徒の乱、ドイツ領東アフリカではマジ=マジの蜂起、スーダンならマフディーの乱、朝鮮なら東学党の乱です。

これらの事象も義和団事件と似たような背景で勃発しています。

ここで考えてみてください。

地方軍人の自立の例でも述べたように、これらの用語を個別に一つ一つ暗記するより、上記のような手順で知識を体系化した方が暗記の労力が最小限に抑えられると思いませんか?

今回の例に当てはめると、問題の義和団事件は19世紀から本格化した列強による中国進出によって、清の民衆が貧困化し、義和団事件という宗教を背景にした暴動につながりました。

では、同様に列強の進出を受けたイランやスーダンでも同様の事例が起こり得ます。

それが上にある「バーブ教徒の乱」などです。

背景はどれも同じなのですから、あとは事象の名称を地域別に抑えて、各事象で個別に出題される箇所をプラスアルファで覚えればよいのです(例えば、スーダンのマフディーの乱ではイギリスのゴードンがハルツームで戦死など)。

対して、雑に勉強してしまう生徒は一つ一つの事象を別個に覚えようとします。

それこそノートに名称を列挙して、教科書の内容を書き写したり・・・

※書くことで覚えやすくなるという意見を否定しているわけではありません。また、歴史の法則から外れた例外も中には存在します。そういった例外こそ個別に気をつければOKです。

また、抽象的な歴史の知識を理解することは、歴史的事象の本質的な理解につながり、難易度の高い正誤問題や論述問題への解答力が強化されます!

いわゆるやや難といわれる問題こそ難関大学では差がつくポイントです。

例えば、以下をみてみましょう。空欄穴埋め問題で、慶応の法学部で出題されました。(実際は選択問題)

「港市国家マラッカは、(    )とよばれる港務長官を置き、東西海洋交易の中継港としての地位を確立した~以下省略」

答えは「シャーバンダル」です。…聞いたことはありますか?

山川出版社の用語集にも記載がなく、知らない受験生の方が圧倒的に多いはずでいわゆる難問です。

こういった難問は正答率が低く、あまり差がつきません。

こういった滅多に出ない用語を覚えようとしたり、一つ一つ用語をつぶしたりするよりも、先に出した例の正誤問題などを理屈で解けるようになる方が圧倒的に効率的ですし、実力も上がります。

そして、何より歴史的事象の本質的な理解は記憶の定着を促します。

当たり前のことですが、この事実はかなり重要です。

人間は納得・理解したものは忘れにくく、機械的に暗記したことは記憶から抜けやすいです。

しかし、こういった抽象的な内容は残念ながら教科書には記述がありません。

個別の歴史的事象の背景が述べられているのみで、自学で知識を体系化するのは非常に困難であると言わざるを得ません。

ですから新塾の授業ではこういった内容を、生徒自身に思考させたうえで理解まで導きます。

塾・予備校で世界史を学ぶ意義の一つは、自学よりも質が高く、かつ効率的に最短ルートで学習できるのです。

がむしゃらにやるのは効率が悪い
知識を体系化して、暗記は最小限に!

②出題傾向を知る

世界史は膨大な知識量を求められますが、出題のされ方は傾向があります。

出題傾向を知ることはとても重要です。

例えば、「マルティン=ルター」。16世紀にドイツで宗教改革を行った彼の名前は中学校の社会でも登場します。

しかし、世界史の大学入試では、「ルター」という彼の名前を直接問われることはほぼありません。あまりにも基本的な人物だからです。

では、ここで山川出版社の世界史用語集で彼はなんと記載されているか見てみましょう。

ドイツの宗教改革を指導した神学者。ヴィッテンベルク大学の教授となったのち、贖宥状販売を批判して宗教改革を開始した。ルター派教会設立など新教派の指導と同時に、聖書のドイツ語により近代ドイツ語の確立も促進された。主著は『キリスト者の自由』

さて、この記載の中で、入試で問われる箇所はどこでしょう!

頻出ポイントを強調すると以下のようになります。

ドイツの宗教改革を指導した神学者。ヴィッテンベルク大学の教授となったのち、贖宥状販売を批判して宗教改革を開始した。ルター派教会設立など新教派の指導と同時に、聖書のドイツ語訳により近代ドイツ語の確立も促進された。主著は『キリスト者の自由』

※オレンジ色が頻出事項。合わせてルターが聖書のドイツ語訳を行った、ザクセン選帝侯フリードリヒの居城であるヴァルトブルク城も問われる。青字の部分は特に正誤問題や論述問題などで必要な視点。

いかがでしょうか。

ここで自分の教科書や用語集を確認してみましょう。

例えば、用語集なら見出しの用語ばかりにアンダーラインを引いてはいませんか!?

もちろん、一問一答スタイルで歴史用語が直接的に問われるケースも多くあります。

ですが、特に難関大学になると、正誤問題などでその用語の詳細な情報が問われるのです。

そして残念ながら歴史の教科書には、「ここが入試で問われる!!」などと親切な注意書きはありません。

自学で頻出事項をつかむには大量の過去問に触れる必要があります。それこそ適切以上の量の問題を解かなくてはなりません。

そこで塾・予備校の出番です。授業では世界史の知識だけでなく、入試で問われる視点・問われない視点を伝え、実践的な指導を行います(問われない内容を知り、切り捨てることも重要です)。

敵を知らずに学習するよりも、何が出て何が出ないのかを教えてもらって学習するのでは効率が全く違います、

つまり、塾・予備校で世界史を学ぶ意義の一つは、敵を知り、効率的に最短ルートで学習できることと言えるでしょう。

③終わりに

さて、①と②の内容を見て、皆さんは気づいたことがあるでしょうか。

そう、①と②ともに結論は同じでしたね。

それは「効率的に最短ルートで学習できる」

これは受験世界史を対策するうえで非常に重要な視点です。

なぜなら、文系の生徒にとって世界史が最重要科目であってはいけないからです。

では文系にとって最重要科目は何か?それは、一般的にいうと間違いなく英語です。

昨今、入試において英語の重要性は増す一方で、世界史に比べて英語の優先順位が高いのは間違いありません。

※あくまで一般論で、もちろん人によって状況は違います。得意・不得意の差が科目ごとに差が極端に大きい場合や、英検などの外部試験を利用し一般入試で英語が免除されるケースもあります。

ご存じのように共通テストの配点は英語と国語の配点は200点満点(英語はリーディング100点・リスニング100点)で、世界史は100点満点です。

大学ごとの個別入試でも配点に差があるケースが多いです。

例えば、早稲田大学では、教育学部の一部の学科と人間科学部以外は世界史よりも英語の配点が高く設定してあります。

国際教養学部では一般試験は英語のみです。

さらに、国公立大志望の場合はここに共通テストにおける数学と理科が課されるケースが多いです。

ますます世界史にかける時間と労力は限られます(特に東京大学や一橋大学のような首都圏の文系最難関大学になると二次試験でも数学が必要です。そしてこの二大学の合格の鍵は数学が握ります)。

世界史にかける時間は実は限られています。

間違っても、高3の受験勉強で、最も時間と労力をかけた科目が世界史であってはいけないのです!

こうした背景から世界史を効率的に学習することは非常に重要です。

そして塾・予備校で授業を通じて世界史を勉強することは間違いなく皆さんにとってメリットが大きいと言えます。

また、同じ理由から世界史の学習を高2から始めることも強くおすすめします!

高2の段階で、「基礎的な知識の習得」「歴史をとらえる視点の訓練」「世界史の学習法の定着」を行うことで、高3の世界史の学習の負担がグッと減ります。

入試にフライングはありません!!

高2生・高3生の皆さん、ぜひ世界史を一緒に効率的に学びましょう!

※もちろんですが、授業を受けるだけで成果は出ません。

自身で復習と演習をすることが大前提です。

※上記以外にも、塾・予備校で世界史を学ぶ意義はもちろんたくさんあります!

一体それは何なんだ?と気になった方はぜひ体験授業にいらしてください!絶対に一人でやるよりもはるかに成績を伸ばすことをお約束いたします。

そして最後に大切なことを一つ。

「世界史は最高に楽しくて魅力的な科目です!!」        

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